菅原一剛さん
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ディアドルフ8×10
ぼくが初めて、この「ディアドルフ」という木製の大型カメラのことを知ったのは、学生時代に見た写真展で、かのエドワード・ウェストンが使用している姿が写された写真を見た時でした。一目見て「格好いいなあ」と思っていました。そして当時より、もちろん現在でも大好きな写真家ウェストンと同じカメラを、いつか使ってみたいと夢見ていました。 ![]() 最初に使用したカメラは、現在でも現役として使用している「ニコンF」。ぼくは大学を卒業後、このカメラを持ってパリに行き、自身の写真を撮るのと同時に、その「ニコンF」で、仕事としてファッション撮影を始めました。ぼくはその仕事で手にすることが出来た最初のギャランティーで、遂に「ディアドルフ8×10」を、これもまたウェストンが使用していたものとほぼ同じ「コダック・コマーシャルエクター」というレンズと共に、念願の「ディアドルフ」を手に入れました。当時の銀一カメラの担当の方の「菅原くん、まずはハッセルを買ってからにしたら」というアドバイスを聞かずに、いきなり2台目のカメラとして、大型カメラを購入したのですから、まさに若気の至りです。 そしてぼくは、その大きなカメラを一人で担いで、奈良に始まり、国内外での撮影を繰り返しました。同時に、ファッション写真や広告写真といった撮影でも、とにかくこの大型カメラを頻繁に使用しました。その後、1999年より始めた「湿板写真」も、やはりこの「ディアドルフ」と共にスタートしました。そのおかげで「8×10」のカメラは、硝酸銀で真っ黒になっていますが、今では、「5×7」に「4×5」と、「ディアドルフ」のすべてのラインアップが、様々なシーンで活躍してくれています。 カメラというのは不思議なもので、手に馴染むものと馴染まないものがあります。先述の「ニコンF」にしても、10数年前から使用し始めた「ライカM3」なども、ぼくにとっては他のモデルよりも、なんとも手にフィットします。同じように「ディアドルフ」という大型カメラも、他の大型カメラにはない、独特のラフな感じが、ぼくにはとてもよく手に馴染んでいます。どうやら、カメラという道具がどんなに便利なものになろうとも、やはり手で触るものに変わりはないのですから、その写りの描写と共に、ますますこの手触り感が大切なものとなるのかもしれませんね。 アフリカにて、サバンナを見渡すことが出来る大きな石場の上で、ぼくは毎朝ディアドルフで、大地と空の写真を撮っていました。 奄美大島にて、奄美の木漏れ日の写真を、なんとしても写したくて、湿板写真にて撮影を繰り返しました。その時のカメラも、このディアドルフです。 ©菅原一剛
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![]() ぼくが20代の頃、パリから戻ってファッション写真を中心に仕事をしていた頃、雑誌などで拝見する広川泰士さんの写真は、いつも気になる写真でした。中でも「スタジオヴォイス」で撮られていたポートレイトは、今でもとても印象に残っています。共通の知人が何人もいることもあって、お互いになんとなくは知っていたのですが、あまりお会いする気合いもなかったのですが、現在広川泰士さんが中心となって進められている「ゼラチンシルバーセッション」に参加させてもらって以来、お目にかかる機会も増えました。そして写真通りのそのお人柄に、いつもお世話になっています。 ![]() |
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