鈴木一雄さん
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ペンタックス67
「ガタシャン!」という力強い音を発しながら、けっこうな振動と共にシャッターがきれる。そのシャッター音にふさわしい野武士のような風貌をしたカメラ、それがペンタックス67である。 私がアマチュア時代、スナップ写真からモデル撮影、そして風景写真まで幅広く撮影の技術習得に努めていたときに相棒を努めた、愛おしい銀塩カメラである。最初は、ニコンFEを使っていた。だが、本格的に写真に取り組むにあたり、写友のすすめでペンタックス67を購入するに至った記憶がある。レンズも、広角から望遠まで、いろいろなものを使った。400ミリレンズなどはバズーカ砲のようで、ピント合わせも両手でピントリングを回さなければならなかった。フィルムはブローニーサイズの110サイズで10枚、220サイズで20枚しか撮れず、一本入れてもあっという間に終わってしまい、シャッターチャンスのたびに必死でフィルム交換を行ったものである。 ハッセルブラッドの「シュボッ」という洗練されたシャッター音を聞くたびに少しは羨ましく思ったが、価格的に手が届かず、このカメラをずっと使い続けた。 ![]() やがてメインカメラは、35ミリ判一眼レフ、そしてペンタックス645N、645N?へと移っていった。私がこれまで使ってきたカメラは、銀塩カメラとデジタルカメラを併せておよそ20機種である。だが、この67だけは手放すことはなく、時にはシャッターをきって写真集・写真展の作品群にそっと紛れ込むこともあった。下記の紅葉の作品は、2006年に発表した写真展・写真集『おぐにの聲』に収蔵されたペンタックス67の作品である。 さすがに近年は出番が無くなってしまったが、それでも時折手にとって空シャッターをきることがある。 「ガタシャン!」という懐かしい響きを体で受け止めるとき、青春時代の記憶が鮮やかに蘇る。撮影に、写真に時間を注ぎ込み、夢中で取り組んでいた甘酸っぱい感動が、全身を駆け巡るのである。 写真が銀塩からデジタルの世界に大きく舵を切った現在、カメラは、パソコンのように時間の経過と共に価値が失われていくものになってしまった。カメラそのものが、消費社会と使い捨て時代に迎合したものになりつつあるのが、寂しい。だからこそ、このペンタックス67は、いつまでも私の手元にあるのかもしれない。 ©鈴木 一雄
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![]() 佐藤仁重さんは、とてもエネルギッシュな女性写真家である。自ら「快晴堂」というカメラのお店を経営しながら、“女性だけの写真教室”を主催し、そして数多くの講師を務めている。“女性だけの写真教室”の卒業生は、2600名にも及ぶという。すごいことだと思う。たくさんのアマチュア写真家を指導しながらも、ご自分の作家活動も旺盛に行われている。近年は,風景写真にも取り組まれている。これまで二度ほどフォトコンテストの審査を一緒にさせていただいたご縁で、時折、鍋パーティにもご参加いただいているが、楽しいお酒である。 ![]() |
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