赤城耕一さん
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オリンパス OM-1N
カメラ回想録というのは、昔つきあっていたガールフレンドの容姿を少々盛って、酒席で自慢げに語るような感覚で照れくさい。 これまで使用してきたカメラは、あっちにこっちにとひっかかってきたわけで、世間さまの予想に反して、特定のカメラに強い思い入れはないのである。したがって、お気に入りの機種は何かと問われると、答えづらいのである。 仕事の9割以上はデジタルカメラを使用しているのに、私事となると、意固地な性格ゆえ、フィルムカメラによる写真制作を続けていて、いまも様々なカメラと浮気しているのだ。こと、カメラに関してはプレイボーイな私なのだけど、ほとんどのフィルムカメラは熟女となり、トウが立ってきているのが問題ではあるけど。 と、いうわけで今回のようなオファーをいただくとタイヘン困惑するが、熟考のすえ、学生時代から仕事カメラを経て、今では趣味カメラと、30年以上苦楽を共にしてきたオリンパスOM-1Nを取り上げることにした。 なぜM-1でもなくてOM-1でもなくてOM-1Nなのかと問われれば、さほど意味もない。写真を勉強しようと思って大学に入った時に、今は亡き親父に買わせた機種で、発売時期に合っている。 OM-1とOM-1Nの機能的な違いは、専用スピードライトのT32とかT20を使うと、ファインダー内にチャージ完了のLEDが点灯することくらいか。 放蕩息子は、高校時代にオリンパスOM-2も親父に買わせていたのだが、大学入学時にメカニカルカメラでなければ、ホンモノではないとかなんとか、屁理屈をつけたような気がする。たぶん。言ってることが今でも大して変わらない。でも、ライカじゃないところが嫌味じゃないでしょ。 黒くて、小さくて軽量で、横走り布幕のシャッターはトロンという優しい音を響かせる。購入から30年以上の間にOM-1Nを通り過ぎたフィルムは1,000ロールを軽く越えていると思うが、仕事をはじめてからも使用している。仕事ではモードラを装着し、連続撮影でガンガン酷使していた。OM-1Nは根を上げることもなく、それに一切の故障もなく、初期OM系の泣き所であるプリズムのシミも発生していない。メーターも動いており、これまで数度のオーバーホールはした記憶があるが、いまだに現役で使えているのである。大したヤツだぜOM-1N。
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![]() 神立尚紀さんは、写真週刊誌をベースとして活躍してきた報道カメラマンです。 現在はノンフィクションライターとしての活動も多く、戦史ドキュメンタリーの分野では、多くの著作があります。この一方でカメラメカニズムの洞察にも定評があり、カメラ雑誌でも活躍中。ライカに関する著作もあります。神立さんがどのカメラを選ぶか、個人的にとっても興味ありなのです。 ![]() |
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