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われらライカ仲間
Vol.11
藤井 智弘
Tomohiro Fujii
インタビュアー
対談お相手
藤里 一郎
Ichiro Fujisato
『死神の精度』は、
ライカM6とカラー・スコパー1本で
 歌手や女優、さらに格闘技など、人物写真を中心に活躍している写真家、藤里一郎さん。アマチュアへの写真指導も積極的に行っている。実は藤里さん、大学時代の私のひとつ下の後輩になる。よく一緒に活動していたが、当時はライカの話をしたことはなかった。
「ライカに興味を持ったのは、大学を卒業して、助手になってからですね」
 藤里さんは大学卒業後、故・大倉舜二さんに弟子入りした。大倉さんはカメラ好きとしても有名だった。
「先生はライカをいっぱい持っていて、僕にくれるわけでもなく(笑)、いいなぁ、欲しいなぁ、と憧れていました。その頃はスナップをよく撮っていて、ライカで撮ってみたいと思っていたのです」
 そして21歳のときに、ついにライカを購入した。ブラックのライカM6だ。
「今でも値段を覚えていますよ。並行新品で306,000円でした。まだ助手でお金がなく、たしか60回払いだったかな。長期ローンを組みました。はじめはM3も考えたのですが、やはり露出計が入っている方が便利なので、実用性を重視してM6にしました」
 1996年に私が写真展を開催したとき、藤里さんがギャラリーに来てくれた。藤里さんは首からブラックのライカM6を提げていたのを、今でもはっきり覚えている。そのライカM6こそ、最初に買ったライカだった。
 レンズは同時代のズミクロン50ミリF2を購入。しかし描写が好きになれなかったとのこと。
「どうしても写りが面白いと感じなかったのです。先生に相談したら『そんなレンズ使うな!これを使え!』ってキヤノン50ミリF1.8をくれました。撮ってみたら柔らかくてすごくいい。結局、そのズミクロンは売っちゃいました。このキヤノン50ミリF1.8は先生の形見ですね」
 大倉さんは、ライカのレンズは古いモデルが好きで、階調再現と味わいの豊かさが良かったのだろうと藤里さんは語る。
「先生はよくレンズテストもしていました。異なる3本のレンズで同じ写真を撮って、現像、プリント。それを僕に見せて『どのレンズで撮ったか当ててみろ』って。まるでワインのソムリエですよね(笑)。でも、鍛えられたおかげで、当時はどのレンズで撮ったかちゃんとわかりましたよ。『これが沈胴ズミクロンだ』とか」
 しばらくライカM6とキヤノン50ミリF1.8で撮っていた藤里さん。ところが2005年、伊坂幸太郎さんの作品『死神の精度』(文春文庫)の写真を担当することになり、フォクトレンダーのカラー・スコパー21ミリF4を購入した。
「僕にとって死神は、超広角のイメージでした。それで21ミリを買ったのです。しかもカラー・スコパーはカリカリにシャープで、僕のイメージにピッタリ。『死神の精度』は、このレンズ1本ですべて撮りました」
 そして39歳のとき、さらにもう一台M6を購入した。シルバーボディで巻き上げレバー巻き戻しクランクなどがブラックの、いわゆるパンダだ。
「39歳だからサンキュー。単純でしょ(笑)。感謝の気持ちを込めて、煩悩の数と同じ108人の女の子を撮る企画を始めました。一台のM6に標準、もう一台に広角をつけて撮っていたんです。でもリーマン・ショックのおかげで企画が頓挫してしまって未完成です。とはいえ70人くらい撮りましたよ」
 50ミリが柔らかい写りで21ミリが硬い写り。バランスがとれないので、50ミリはフォクトレンダーのノクトン50ミリF1.5を購入した。
「続きをまた撮りたいなとも思うのですが、時間が経ってしまったし、ちょっとわからないですね」
 2006年のライカM8で、M型ライカもデジタルが登場した。それから10年経つが、藤里さんは、デジタルのM型ライカはいまだ購入していない。
「デジタルになってからボディの厚みが増して大きくなりましたよね。それがどうしても馴染めないのです。僕は、カメラは小さい方が好きなんですよ」
 そこで購入したのが、APS-CコンパクトのライカX2だ。小さくて軽いのはもちろん、写りもお気に入りとのこと。
「色が日本のメーカーと違いますよね。それがライカらしさを感じます。それとモノクロモードがいいんですよ。自然なモノクロ写真が撮れます。僕はRAWで撮って、パソコンに向かって現像処理…というのが好きではありません。基本はJPEG撮って出し。だからJPEGでライカの個性が出るライカX2の写りが好きです」
 それでは、今気になっているライカ、もしくは欲しいと思っているライカはあるのだろうか。
「ちょっと気になっているのはライカQですね。フルサイズであれだけ小さいので興味があります。AFだけでなく、MFも使いやすそうですね。あと、いつか欲しいと思っているのがライカM3。やはり名機と呼ばれているカメラですし、何よりファインダー倍率が高いのが魅力です。僕は右目でファインダーを覗いて、左目は開けたまま。M3だと両目開けた状態でファインダーを覗いても違和感がありません。まるで肉眼の景色の中にブライトフレームが浮かんでいるようで、それはM3でしか味わえない感覚なのです」
 いつかライカM3による藤里さんの作品がみられる日が来るかもしれない。



 
 21歳のときにはじめて購入した、ライカM6ブラック。

  
  コンパクトさとモノクロモードの描写がお気に入りとい
  うライカX2。

 
 藤里一郎さんは、小説家・伊坂幸太郎さんの作品『死神
 の精度』と『死神の浮力』(ともに文春文庫)で表紙と
 作中写真を担当され、同名の写真展も開催。『死神の精
 度』の作品はライカM6とフォクトレンダーのカラー・
 スコパー21ミリF4のみで撮影された。

  
  藤里さんの師匠である、故・大倉舜二さんから譲り受け
  たという、キヤノン50ミリF1.8。形見として大切にさ
  れている。


Profile
Profile
藤井 智弘
Tomohiro Fujii
1968年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。96年からフリー写真家となり、カメラ専門誌での活動や、国内、海外の街を撮る。ライカは97年購入のライカM3が初。現在はデジタルのライカM、ライカM9、ライカXバリオを主に使用する。2016年9月より、デザインオフィス(株)AQUAに所属。(公社)日本写真家協会会員。
(株)AQUA Webサイト
プライベートWebサイト
 
藤里 一郎
Ichiro Fujisato
男っぷりの良い写真、色香あふれる写真を撮る当世一"ヒップ"な写真家。1969年生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、大倉舜二氏に師事、96年独立。広告、雑誌、個展などジャンルを問わず作品を発表。好き力を武器に女性ポートレイトのジャンルに参戦中。藤里写心大学(写真スクール)主宰。
藤里一郎オフィシャルサイト
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