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大坂寛さん
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コンタックスRTS

 草原の上にRTSとともに寝っころがり、初夏の風と空を感じながら写真を撮っていた。家に帰りフィルムを現像してみると、コマ、画面の端に違和感のある奇妙な物体がいた。等身大の蟻のシルエットである。これには仰天した。草むらにいた小さな蟻が何処からかRTSの隙間に侵入し、フレーム枠の端っこを歩いていたと思われる。2コマ以外にはそれらしき物が写っておらず、その後シャッター幕により無惨にも切断されたものと思われた、、。

 僕が日芸に入学した頃、仲間が ニコンF や キヤノンF-1などを使っており、中学時代に少ない小遣いと昼飯代を浮かせて購入したペンタックスSPでは、何とも気恥ずかしく心細い面持ちであった。その頃、バイト先の写真屋の店主の薦めで話題のコンタックスRTSを購入するに至り、憧れのカールツァイスレンズを使用出来ることに大変心が躍った。

 RTS の良さは電磁レリーズであろうか。今では当たり前の機構ではあるが、タイムラグが無く気持ちの感じた瞬間シャッターが切れることは、他のカメラには無かった長所である。ただ完全な機械式カメラではない故の電気的な故障など、ショックには弱いという欠点もあったと思う。

 それでも夢のカールツアイスレンズが使えるということが最大のメリットであろう。解像度主体の日本製レンズとは異なり、豊かでまろやかな表現力はモノクロフィルムを引き伸ばすにあたり、とても心地良いトーンを醸し出してくれた。

 耐久性などの不安から後にニコンF3・F4などに移行していったが、Planar 85mm F1.4の描写が素晴らしく、無限遠までピントが来ないのを条件に、コンタックスマウント部をレンズから外し、当時のニコン用タムロンレンズ?のマウントを外し加工、組み込みニコンに使用している。10m~接写まで、というスペックだが、、。

 またその他、自作カメラがあり、作品『Venus』で使用したポラロイド665カメラや 6×12カメラなどもある。アルミを糸鋸で切り、ハンドドリル、タップ切り、ライター用ガスを利用したハンド溶接機などで軽量に仕上げた自作品で、カレンダーの撮影などで恐れ多くも海外撮影にも耐えてくれた。

 しかし数多くのカメラを使用して来たが、コンタックスRTS は学生の頃より僕が写真家としてデビューし、日本写真協会新人賞などを与えてくれた、僕にはかけがえの無い想い出多いカメラである。ある時はアスファルトに、又は海岸の岩場に落としレンズが海中に、、、。

 今はボディの革張りも粘つき剥がれ無惨な姿ではあるが、労ってあげたいと思う。


『Syzygy』より

『Syzygy』より
『Syzygy』より

©大坂 寛

今回の語り手プロフィール
大坂寛
Hiroshi Osaka
次回の語り手プロフィール
織作峰子
Mineko Orisaku
1956年山形県に生まれる。日本大学芸術学部写真学科卒。分身をテーマにしたヌードシリーズ『Syzygy』『Venus』他、浮世絵や蒔絵に見られる平面的遠近法で花を通して自己の内面や生命観を投影した『botanic heart』など、個展を国内外で開催する。作品は東京都写真美術館、グラハムナッシュコレクションなどに永久保存されている。1982・1984年 JPS展(日本写真家協会)金賞、1985年 日本写真協会新人賞など多数受賞。
http://hiroshiosaka.wix.com/photo
  石川県生まれ。1981年度ミスユニバース日本代表に選出される。ミスユニバース任期中に写真家・大竹省二と出会い、1982年大竹省二写真スタジオに入る。1987年独立。世界各国の美しい風景や人物の瞬間を撮り続け、日本全国や世界各地で写真展を多数開催。大阪芸術大学教授 写真学科 学科長・大阪芸術大学通信教育部長・日本広告写真家協会理事。
織作峰子さんは、大阪芸大の写真学科長を務めながら、色々な媒体で活躍されている著名な女流写真家です。美しさの中に少女のような風を感じさせ、その佇まいから描き出される被写体には、どのようなカメラの想い出があるのか興味のあるところです。
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