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齋藤亮一さん
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マミヤ7II
 今なお変貌著しい中国ですが、そのスピードに加速度がついたのは、90年代の後半、2008年の北京オリンピックに向けての頃だったと思います。
 初めて中国の土を踏んだのは1994年。その頃は上海や南京などの大都市にも、まだのんびりとした空気が漂っていました。持って行った機材は中判一眼レフカメラ。ある時期から35mmカメラの描写が物足りなくなり、中判カメラにモノクロフィルムというのが、当時の私の定番スタイルでした。撮影を始めてまもなく、中国ではこの方法が通用しないことが分かりました。それまでの撮影スタイルといえば、人口密度の少ない東欧やロシアなどで、一人一人の出会いを大切に、ゆっくり撮影していくというもの。あわてなくてもじっくりピントを合わせる時間がありました。ところが中国の街なかは、どこもかしこも人の波。ファインダーを覗くと、右から左から次々と人が現れては消えていき、ピントを合わせる暇もありません。結局、ほとんど撮影もできぬまま、がっかりとした気分で帰国しました。
 それから7年。2001年9月に出版社の依頼で再び中国に行くチャンスを得ました。前回の失敗があったので、カメラは何にしようか慎重に考えました。そこで選んだのが、中判の描写と35mmの機動性を兼ね備えたレンジファインダーカメラ、マミヤ7IIです。ボディ2台にそれぞれ65mm F4と80mm F4のレンズを着け両肩にぶら下げ、状況に応じて選択しました。絞りはできるだけ絞り込んで、パンフォーカスに近い状態にセットしておき、出会い頭にピント合わせが必要ないようにしました。カリッとしたレンズの描写も、今回のテーマには合っているように思いました。これらの準備はみごとに的中。押し寄せる人の波も、どんどんさばけるようになりました。この撮影旅行が次の写真集『Lost China』に向かうきっかけになります。というのも、7年前にも行った街の古い建物が、どんどん取り壊され、高層ビルが猛スピードで建設されていたからです。大好きな古い街並みを今記録しておかなければ、オリンピックの頃にはもう何もかも姿を消しているかもしれない。そんな焦燥にかられ、依頼仕事を終えると、2ヶ月後に再訪し撮影を開始。翌2002年はそのほとんどを中国の撮影にあて、忙しく全土を飛び回りました。すでに消失した街もずいぶんあり、「もう少し早く来ればよかったのに」と言われたことも度々でした。
 一番難渋したのは、ブローニーフィルムが一本で10カットしか撮れないこと(途中から20枚撮りの220に変えましたが)。マミヤ7IIは35mmカメラのような軽快さでシャッターが切れるので、あっという間にフィルムを消費してしまいます。初めての撮影では多めに用意したはずのフィルムが足りなくなり、大慌てで現地のカメラ店を回るという失敗をやらかしました。ブローニーフィルムなど扱っている店はほとんどなく、ようやく探し当てたイルフォードのフィルムは期限切れだったというのも今は笑い話です。(買って使いました!)帰国すると山のような暗室作業が待っていて、2002年は中国一色でした。
 こんなアナログな職人仕事も今はなつかしい思い出です。

『Lost China』より ー重慶1ー

『Lost China』より ー重慶2ー

『Lost China』より ー武漢ー

©齋藤亮一

今回の語り手プロフィール
齋藤亮一
Ryoichi Saito
次回の語り手プロフィール
大坂寛
Hiroshi Osaka
1959年札幌市に生まれる。日本大学芸術学部写真学科卒。激変する世界の現場を見たいと、89年のベルリンの壁崩壊後の旧東欧諸国や、ロシア、中国などを回る。近年は「命の輝き」をテーマに、日本にカメラを向けている。写真集に『新しい地図』『NOSTALGIA』『BALKAN』(2000年日本写真協会年度賞)『ゆるやかなとき』『Lost China』(2003年東川賞国内作家賞)『フンザへ』『INDIA下町劇場』『佳き日』『ふるさとはれの日』他。
http://www.saitoryoichi.com
  1956年山形県に生まれる。日本大学芸術学部写真学科卒。分身をテーマにしたヌードシリーズ『Syzygy』『Venus』他、浮世絵や蒔絵に見られる平面的遠近法で花を通して自己の内面や生命観を投影した『botanic heart』など、個展を国内外で開催する。作品は東京都写真美術館、グラハムナッシュコレクションなどに永久保存されている。1982・1984年 JPS展(日本写真家協会)金賞、1985年 日本写真協会新人賞など多数受賞。
http://hiroshiosaka.wix.com/photo
次のバトンは大坂寛さんにお願いしました。大学時代の一学年先輩で、写真のセンスは当時から別格のもので、いつもこの先輩の後姿を見てがんばってきました。カメラへの造形も深く、気に入ったカメラがないと、自分で組み立てていまうという離れ業をやってしまう人です。
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